2000年のミレニアム公演において、
第二次世界大戦当時の神風特別特攻隊の物語を書き下ろすことになった。
登場人物は架空のものであっても、時代背景はリアルであり、
自分にとっては、初めてのノンフィクションに挑戦することになったわけである。
それで、当時の海軍や空軍の仕組みを一から勉強しなくてはならないことになった。
『桜』の執筆に取りかかる前に、まず通い詰めたのは図書館であった。
来る日も来る日も山盛りの本を抱えて帰って来ては、当時のことを読みあさる日々。
必要な文献を探してはメモを取り、間違えてはならない歴史を検証していく作業。
乏しい知識から軽はずみに特攻隊の話を書くなどと言ってしまったことを、
まだ僅か20代前半だった特攻兵の暮らしを知る度にこの後酷く後悔する羽目になる。
問題はすこぶるてんこ盛りであった。
だいたい、この物が溢れる豊かな時代に生まれ育った我々に、
他に選択肢のなかった当時の若者の気持ちなど、そもそもわかりっこない。
次に無=魂はエンタメ作品を創る集団なはずだったのに、
この深刻な時代背景を一体全体どうしたらエンターテイメントに出来ると言うのか?
当時を知るにつれ、これはことのほか難解で抜本的に難しいことだと思った。
でもわからないのだから、せめて当時に想いを馳せて極力寄り添う努力をしよう。
稽古が始まると、誰となく順次に頭を丸め坊主になっていった記憶がある。
靖国神社には何度も何度も通い、当時の英霊達に手を合わせに行った。
勉強の為に、キャスト全員で鹿児島の知覧特攻平和会館にも足を運んだ時もあった。
遺書をしたためる役作りに入ると、みんなあまりリアルに食事を取れなくなった。
無=魂史上、『桜』ほどキャスト全員が必然的に痩せた作品もないだろう。
2000年 桜
2001年 SAKURA 01(零壱)
2007年 桜 Final~次世代への想い~
2014年 桜 SAKURA-The GIFT-
神風特別特攻隊の隊員達を描いた『桜』は約15年の長い歳月をかけ、
無=魂を代表する作品のひとつとして、少しづつリアルに育っていった。
当時は今のように贅沢な娯楽も当然なかったわけだが、
それでも、少ない煎餅を隠し分け合ったり、三角兵舎で歌ったり、
悪戯したり、夏の蚊の行方を追ったり、真剣勝負の相撲をとったり。
何もない質素な生活のほんの僅かなひとときの中にも、
いつの時代の若者と何ら変わりない、腹を抱えて泣き笑いする時間や可笑しみ、
ただそこに苦悩や哀しさのみがあったわけではなく、
小さくささやかな幸せと活きた証があったことも、苦悩と同時に描けたことが、
きっと無=魂らしい作風となった要因なのかも知れないと今は感じている。
そこまで辿り着くまでに、気の遠くなる途方もない時間ではあったが、
この作品の真の完成までには実に必要必然な時間であったのだ。
『今、己に出来る懸命』
作品の中で空に散り、靖国の桜となった隊員達が語った言葉のひとつだが、
あれからずっと自分の大切にしている座右の銘となった。
【座長TERU】
TERU Private Facebook
https://www.facebook.com/teruhirouto
—————————————————————————-
#MU=KONの公式SNSです。
是非フォロー宜しくお願いします !!
○SHOWGEKI MU=KON Official Facebook
https://www.facebook.com/showgekimukon
○SHOWGEKI MU=KON Official Instagram
https://www.instagram.com/showgeki_mukon_official/
○SHOWGEKI MU=KON Official Twitter