理由を語るとひとつの理由だけでもなく、
ベン・ハーのように超大作となってしまうので詳しい事情は割愛する。
この20年は決して順風満帆な日々ばかりではなくて、
ご多分に漏れず、小劇団の抱える諸々の悩みにぶつかったり、
その他ひとえに自分の未熟さゆえに、無=魂にも幾度か劇団解体の危機があった。
役者としては、理想的には、稽古に入れば役作りに集中したいわけだが、
当然経済体力のない無名に近い劇団が、役者業だけで食べていくのは難しい。
役者仲間は生活の為に副業を兼務することになるのが未だ現状である。
自分は縁あり出逢った塗装業親方の元で、随分長い間修行をさせて貰った。
いわゆるペンキ屋職人の世界だが、知れば知るほど、実に奥が深い。
『師勝な仕事』と言う職人用語があるが、読んで字の如く、
師匠に勝つぐらいの繊細で完璧な仕事をすると言う意味である。
頭を捻ってどれだけ考えてみても、決して思い描いていた通りにはいかず、
ひたすら刷毛を握ってきた経験と汗をかいてキメ仕上げて来た場数のみ、
『師勝な仕事』それだけが物を言う厳しい職人の世界である。
職人の世界はどこか芝居創りととても似ている。
パテと言う下地は芝居で言う脚本や演出であり、小手先の誤魔化しはきかない。
その重要な土台がうまくぴったり収まらないと、
今度は上にのせるペンキが綺麗で師勝な良い仕事をしてくれないのだ。
この親方と職人仲間の元で、
脚本家として、演出家として、役者として、そして人として、
自分に必要なことを、一体どれだけたくさん学ばせて貰っただろうか。
わけあり暫く芝居から離れていた時に、
『そろそろ新作を書いてみたらどう?』と背中をポンと押してくれた仲間がいて、
迷いなく今度は、必ずペンキ職人の話を書こう!! と決意した日を思い出す。
これは『THE 職人』劇中最後にスクリーンに映し出された子供達の笑顔のワンシーン。
『ただ生きる』のではなく、『自分らしく活き活きと活きる』こと。
そのメッセージをどうしても伝えたくて、職人達の汗と笑いと涙の物語を描き、
2006年に上演されたのが、『THE 職人』であった。
自分が『生きる』ではなく『活きる』と言う漢字を今も良く使うのは、これが理由である。
追記
現役のリアル職人の親方と仲間達は、今でも公演は必ず観に来てくれている。
そして、こんなすっかりといい歳になった自分に、
千穐楽には旨くて良い酒を呑めよと、未だに小遣いをこっそり渡してくれる親方に、
間違いなく自分は一生頭があがらないだろう。
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